はやいもので明日は帰国。とりあえずフェヴァリット・ポイントをチェックするためクルマを走らせる。June Gloomには縁がないようないい天気だ。
Palos Verdes Dr.を一歩海側に入ると静寂が待っている。青空と波の音をバックにゆっくりとした時間が流れる。
一台もすれ違うことなくポイントの見渡せる崖の上に到着。力無いうねりが湾のインサイドまで崩れることなく、そして消えてゆく。昨日の波は幻か。
サーフィンをどうしてもやりたいと思う気持ちが、できなくてよかったという安堵の気持ちがまさってしまった。ノーサーフ・トゥデイ。近くのカフェでひとやすみ。いまでは昔のようなガブガブ飲めるアメリカンコーヒーが懐かしい。
そしてTorranceのショッピングモールに向かい時間をつぶす。Scott Andersonとの約束の時間まであと1時間。それからランチをとるためカレーショップに向かう。
僕が初めてカリフォルニアに来た時には既にあったので30年以上続く老舗だ。ビーフカレーで$12.50。TAXとティップを入れると$16以上にもなる。日本円(¥110)に換算すると¥1,800近い高級品。でもドルだと安く思えちゃうんだよね。ドル・マジック(笑)
さあ食事をすませて、新しいScottのファクトリーへ向かう。移転した先はなんと通い慣れたBruce Grantのファクトリーだ。そういえばBruceはその昔にSanta MonicaのScottのファクトリーを使わせてもらっていたっけ。
新しいファクトリーはHapp Jacobsさんもよく現れる場所だ。Hermosa Beachが近いだけある。歴史を感じる場所だ。
広いファクトリーの敷地に入ると小分けされた部屋がたくさんある。Scottが使っている部屋かわからない。おお、ビール好きのラミネートマンがいた!彼に聞いてみよう。
「やあ、元気かい。Scottに会いたいんだけどどこにいるかわかる?」
「やあ、Hiro。元気そうだな。Scottならその部屋さ。」
と指をさしたドアにはAnderson Surfboardsのステッカーが貼ってあった。
「ありがとう!そうだ、日本のビール好きかい?よかったらこれをあげるよ。」
ラミネートマンは差し入れのビールを嬉しそうに
「ありがとう!」
と言って冷蔵庫に入れた。
Scottはちょうどオフィスでパソコンと格闘していた。顔を合わすなり笑顔になり、
「やあ、Hiro。元気かい。パソコンは疲れるよ。」
Bruce Grant亡き後Scott AndersonはDave Sweet Surfboardsのメインシェーパーだ。Dave Sweet以外でも多くのブランドをシェーピングしているScottはいまやカリフォルニアでは一番忙しいシェーパーの一人ではないだろうか。それは彼の卓越したスキルと人格によるものだろう。
今回はDaveもさることながら別ブランドの件でのミーティングだ。シェーピングルームで今回のブランド以外でScottが手がけているブランドを説明してもらう。
ブランドごとのコンセプト、ヒストリーを理解した上でテンプレートを使い分け、別の顔のサーフボードに仕上げることは至難の技だ。
それをこなすScottは本当に器用なシェーパー。直接会い、色々な意見をぶつけ合い、新しいものを創り出す。満足感100%。今回も素晴らしいものができそうだ。
Scottとは次の再会を約束し、ここでお別れ。そのままサーフボードを預かってくれるMikeの会社MAXWAYに向かう。
Mikeは忙しい中、律儀に待っていてくれた。少し立ち話をして、Mikeにサヨナラを告げる。ありがとう!
さあ、最後のお仕事。いつもシッピングを委託している会社を訪問。丁寧な仕事と的確な提案。それに加えて素晴らしいスタッフの方々。長くカリフォルニアで仕事をしている会社だけあって裏付けされた安定した仕事に信頼を寄せることができる。
ファブリックや新ブランドについてミーティングを繰り返す。この作業はカリフォルニアに来たことを実感できる。すでにオフィスの外は暗くなっていた。
スタッフたちが夕食に誘ってくれた。ロフトをリノベーションした素敵なイタリアンレストランだった。味も間違いなし。また一つ引き出しが増えた。
食事が終わり、食事を付き合ってくれたスタッフの方々にサヨナラを告げる。ありがとうございます。
そして一人でモテルまでクルマを走らせる。なぜか寂しさに襲われる。暗闇を無言で。FMからは70’s。これからも新しいカリフォルニアを見つけよう。生きている実感を味わおう。そう心に誓った。
今回のカリフォルニアトリップはこれでおしまいです。
いつも長い間お付き合いいただいてありがとうございます。
27歳から始まったジャーニーも今回で30年目。ぼくも58歳になりました。
カリフォルニアにはたくさんの思い出がありすぎて、語り尽くすことは無理かもしれません。
そしてぼくも新しい人生を歩み始めました。
回顧してばかりはいられません。
これからのカリフォルニアトリップでもっとたくさんの素晴らしい時間を過ごしたいと思います。
ヘッズらしい新しいブランドと巡り合うために。
今よりも素晴らしい波を当てるために。
ぼくにはリタイアという文字はありません。
それではみなさん、これからもよろしくお願いします!