0wner's essay

003 | 徒然なるままに。:タイミングが合ったら

Glassy Menpita Website by Heads.

前日、友人からの短くそっけないメール。
「明日はどこ?」
「南西だから鹿嶋に行く。5時出発予定。」と返信。

当日早朝、別の知り合いから電話。
「今日、南西だけど鹿嶋ですか?」
「そう、もう今向かってるよ。」
「じゃあ、着いたら連絡ください。ぼくらも鹿嶋に向かいます。タイミングが合えば一緒にサーフィンしましょう。女房と一緒です。」

どこで待ち合わせするわけではない。
一緒に行くわけでもない。
あくまでも「もしも向こうで会えたら、そこの波を共有しようね。」ってこと。
僕らには僕らの好きな環境がある。彼らには彼らの好きな空間がある。
無理に同じ海に同時に入らなくてもいいんだ。
だってサーフィンって、ひとりでやるものだから。

前日メールをくれた仲間とは一緒のポイントでサーフィンした。
いや、正確に言えばポイントだけが一緒で時間帯は別。一緒にいたのは堤防でビールを飲んだ時だけ。
「俺、もう1ラウンド入ってくる。」と僕。
「わかりました。」
僕らが海から上がってきた時には、すでに彼らは場所を移動して姿はなかった。
「サヨナラ」という言葉はないけど、クルマのミラーにはマット代わりに貸しあげたボードケースが、引っかかっていた。 思わず女房とふたりでニコリ。

普段ならひとつのポイントでサーフィンを切り上げて帰路に向かうが、珍しく女房がやる気満々。
「あのポイント見てみよっ?」

別のポイントに移動して波の状況をチェック。
メローな腰ほどの波がブレイクしている。サーファーの数も午前中より大幅に減っている。 クルマをリヴァースで停め、ミニバンの後ろのドアを開け、二人ですわってぼーっと波を見る。 「やろうよ。」女房が口をひらく。
濡れたトランクスに着替え、ボードケースに入れたサーフボードをまた、引っ張り出す。 二人とも裸でサーフィンしていたのでお腹がワックスと擦れて痛い。

海に向かう途中で、知り合いが向こうから走ってきた。会うのは何ヶ月ぶりだろう。うれしい瞬間。ほとんど海でしか会わない知人。 立ち話で15分。岩手のサーフトリップの話を自慢する。
「向こうのやつがサトウさんに伝えてほしいって言われました。そろそろ岩手に顔出せばって。」
今年中に岩手に行こう。サーフィンしに行こう。美味しいもの喰いに行こう。そして笑顔でサヨナラ。
女房はとっくに海の中。

前半のポイントよりもゆるい雰囲気。いいじゃん。乗れるじゃん。
ぼくらは、また2時間サーフィンやった。
全身の日焼けとお腹のワックスずれ。けだるいが充実した疲労が体中をつつむ。そういえば今年はウェットスーツの跡がない。

着替えていると、後ろから声。
「波、どうですか?」以前、このポイントで良く会った地元の女の子。 今はもっと北のポイントでサーフィンしているのだと言う。
久しぶりに会って三人でおしゃべり。また会えてよかった。昔と変わってなくてよかった。
「じゃあ、私も入ってきます。また!」相変わらず元気ハツラツ。

水を浴びていると、また声が。
「もう終わりですか?これからがいいんですよ。一緒にやりましょうよ。」
以前、ボードをオーダーしてくれた方だった。
「もうヘトヘトです。トシですから。」
「いやー、まだまだでしょ。今度夕方にセッションしましょう!最高ですよ。」

海に行けば、久しぶりに会えるサーファー達がいる。
一緒にサーフィン出来なくても楽しい時間を味わえる。

帰路の途中、レストエリアに立ち寄る。
駐車スペースに見慣れたピックアップカー。サーフボードが積まれてある。 今朝電話をくれた知り合い夫婦だ。大きな声で女房が声をかける。
「会えてよかった〜、うれしい。」
お互いの奥さん達。それから立ち話で今日の自分たちのサーフィンのことを話す。
「それじゃあ、気をつけて!」
最後の最後でタイミングが合った。