Owner's essay

001 | 徒然なるままに。:今日も、明日も…

今日も、朝から海を眺めてる。
このサーファーのまわりの時間はゆっくり流れる。
かるくナチュラルにカールした髪をなでながら、一点を見つめる。
セットが入る。うねりが一本、二本、三本目がいちばんアウトでブレイクした。
でも彼はあわてない。
小屋からぼーっと波を見ている。

彼はいつも上半身は裸、それにお気に入りのトランクス。
その年齢には似合わない屈強な肉体と日焼けした肌。
一目見れば優れたサーファーだとわかるだろう。

仲間がきた。サングラスで強い日差しをさえぎる。 その彼も裸にトランクス。
ふたりしてじーっと波を見ている。
しばらくすると、ふたりは昼寝をきめこむ。
まわりのサーファーは台風のうねりを求めて、我れ先にと海に飛び込む。
サングラスのサーファーが起きて、また海を眺める。
「ふたり出たけど、さんにん入った。」
また、寝る。

かれこれ3時間経過。
起き上がり、カールした髪をなでる。
潮があげてきて、ショルダーの張った良い波がブレイクし始めた。
朝早くからサーフィンしていたサーファーが、ひとりまたひとりと海から上がる。
ちょっと長めのレトロなツインフィンを小脇に抱え、無言で海に向かう。
時間差を入れて、サングラスも真っ赤なツインフィンを持ち、海に向かう。

ふたりはまわりのどのサーファー達よりも、セットのいちばんの波を捕らえる。
彼らが動くと、まわりのサーファーはふたりのオーラを感じ、催眠術にかかったように動きを止めて、じーっと彼らをみる。
そしてふたりはツインフィン独特の曲線を波のフェイスに描き出す。
ふたりは海に長居をせず、30分ほどで上がってきた。
しかしまわりのサーファーの倍以上の波に乗っていた。

「まだまだだね。」
「もうちょいだね。」
また小屋に戻って海を眺める。
太陽光線はこころもち緩やかになってきた。
あと3時間もすればサンセット。

少し前からうねりの間隔が短くなり、波高が高くなってきた。
セットでやってくるうねりも3本から4本に増えた。
サングラスが向こうを指差し、
「おおっ、オフしてきたね!」
彼らは今日一日でいちばん良いコンディションに直面した。

ここだとばかりにカールした髪を両手でなでたあと、今度はお気に入りの長めのシングルフィンを持ち、カレントを使ってアウトに出ていった。
小屋に朝8時にきて、いまは夕方の4時。

そう、このサーファーのまわりの時間はゆっくり流れる...